『未完成』より⑦

2013-03-17

『未完成』より⑥の続き、
徳永英明さんの高校生活のお話です。

徳永英明ストーリー『未完成』
(由比良・著 1988.9.10初版発行)
〝トゥモロー・ネバー・ノウズ″より抜粋。

 充実しているアルバイトの時間と、他校の友人、そしてガールフレンド…、そんな要素が彼の暮らしに深くかかわっていいくうちに、自分の高校に対する彼の不満は、増加していく。学生たちは、おおむね学校側の言いなりだった。その窮屈さに不満を感じた学生には、そのうっぷんを学内の弱い立場の者や下級生にぶつけて晴らす者も多く眼についた。圭子と付き合い始めた2年の中頃、彼は、サッカー部に退部届けを提出する。その後ほんの短い間だけバレー部に籍を置くが、2年の終りに、彼はひとつの〝部″を創立させることを思いたった。なんと、応援団を彼はブチ立ててしまったのである。徳永英明は、伊丹市立伊丹高校の初代応援団団長というわけである。
 「やっぱりね、学校に活を注ぎたかったっていうか…。その割烹で一緒にバイトをやってるヤツの話とか圭子ちゃんの話聞くと、尼崎北高ってすごく活気があるわけ。でも、うちの学校全然でしょ?その友達が、応援団やってたっていうのもあって、ヨシ!オレが活入れたる!!って(笑)」
 団の結成にあたって、当初集まった団員はたったふたりの後輩だった。この情けない情況にさらに発憤した彼は、同級生をひきずり込み、かろうじて団を結成させる。
 下駄こそ履かなかったものの、丈の長い、詰襟の高い学生服(いわゆる長ランってやつだ)を着こんだ彼らは、昼休み、放課後と、校庭の隅に陣取って〝練習″を開始した。
 「声が出てない!!」
 なんとなく気遅れがちな他の部員たちは声も小さい。徳永は、そんな彼らを叱咤してゆく。
 団の檜舞台は、運動部の試合だ。練習試合はもちろん、高体連などの公式試合は、恰好の活躍の場となる。それも、野球部の公式戦なら文句ない。そこには、一般の学生も多数やって来て、応援団と共に声援を送ってくれるからだ。
―――しかし。
 しょせん、無理矢理よせ集めた応援団ではあった。そうした華やかな、一般学生にも注目を集める機会は別にして、ほとんど練習もろくに身を入れてやろうとはしなかった。
 彼の落胆は、やはり大きかった。しかし、自分が言い出しっぺで始めた部活動・応援団だった。尻尾をまいて廃部にするわけにはいかない。彼は団を、なんとか卒業まで存続させぬく。



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